「…よーし、先生も本よもーっと」
空気を変えるように明るい声でそう言った先生は、本棚に行って、一冊の本を手にとって席に戻ってきた。
手に持っているのは、最近わたしが読み始めた「好き」という題名の恋愛漫画だった。
…先生も一緒に読書なんて、珍しい
向い合わせで座っているのが、なんだか嬉しかった。
いつも仕事が忙しいのに、今日はそんなに忙しくない日なのかな。
それとも、もしかして…
先生のことだから、大切なお仕事を忘れてたりして…?
わわ、それだったら大変だ。
「…先生?今日はお仕事大丈夫なの?」
不安に思ってそう問いかけると、朝美先生は力強く頷いた。
「仕事もたまには、やらなくてもいいの!息抜きも必要よ!!」
自信満々に親指をたてる先生を見て、思わず笑ってしまった。
仕事はさぼっちゃだめだよ。と、心の中でツッコミを入れたとき、図書室のドアを一定のリズムで叩く音が聞こえてきた。
「あのー…朝美先生…ちょっといいですか」
ドアから顔を覗かせているのは、たしかこの学校の校長先生だ。
「ひぇっ?!え?!は、はい!!」
朝美先生は分かりやすく動揺して、慌てて席から立ち上がると、転びそうになりながら図書室を出ていってしまった。
「ぶはっ……あははっ」
なんて可愛い人なんだろう。
慌てた後ろ姿を見て、そう思った。
そして心の中で静かに呟く。
……校長先生に絶対きこえてたよね
朝美先生、怒られてないといいけど……
でも、あの焦りっぷりと校長先生の気まずそうな顔……
「ぶふっ…ふへへっ…」
だめだ、やっぱり面白すぎる。
久しぶりにお腹の底から笑った。



