高校を卒業して半年。
電車に揺られて地元に返ってきた。
見慣れた景色のはずなのになんだか少し懐かしい。
少し前までこの電車に乗って高校に通っていたというのに、もうこんな感情を抱くなんて。
でも半年じゃあんまり変わったところもないわね。そんな風に思いながら駅を出た時だった。


「あれ?中川さん?」


不意に名前を呼ばれて振り向くと、私と同じようにキャリーケース片手に笑顔で手を振る小宮山くんの姿があった。


「小宮山くんも帰省してきたんだ?」

「親が顔見せろってうるさいから最初くらいはね。それより中川さん、少し雰囲気変わった?」

「そうかな?高校の時から変わったことと言ったら髪が伸びたくらいじゃない?」

「あー確かにずっとショートだったなー。でも、その髪型もすごく似合ってるよ。」

「ちょっと何どうしたの?いきなり!小宮山くんってそんなキャラだったっけ?」


私たちは高校の時、ほとんど会話をしたことがなかった。
3年間同じクラスではあったけど、私たちはタイプが違いすぎて高校生活ではほとんど関わることがなかった。
小宮山くんはシュッとした顔立ちですごく優しかったからとてもモテていて。
反対に私は人見知りだったこともあってずっと同じ友達としか行動してなかった。
だから駅で私を見かけて声をかけられたことに本当に驚いたし、ましてや髪型を褒めらるだなんて。


『ありえない』


なぜこんな状況に陥ったのかわからないまま話していたら、夜ご飯を食べに行くことになっていた。
小宮山秋。私とは真反対の人。
そんな風に高校の時は思っていたから、今後関わることがあるなんて思ってもみなかった。