驚きを超えて、感心した。

私が経済的なことに過敏だと知ったうえで、変に気を遣わないようにここまで用意していたなんて。流石すぎる。

逆に、全てを理解されていたと知り恥ずかしくなった。“無料”の言葉に惹かれる私も私だ。それに、招待してくれた主催者の方に“悪い”だなんて言われたら断れるはずがない。私のこんな性格も、きっと彼にはお見通しなのだろう。

彼は、すっ、と腕組みをして言葉を続ける。


「百合は当日、おばあさんや紘太君と会う時間もいるだろう?食事の値段を気にするなら昼は各自で済ませて、待ち合わせは夕方にするか?…バースデーケーキを用意して、レストランを貸し切っても良いんだが…」

「夕方でいいです!お気遣いありがとうございます!!」


くすくす、と笑う彼。

整った横顔に見惚れて、思わず言葉が詰まる。


(うわ…。初めての“デート”だ。…なんか、すごく楽しみかも…)


ふいに、胸がドキドキして落ち着かない。これくらいで、背中に羽が生えたようにそわそわしてしまう。…当然だ。好きな人にエスコートされてどこかへ出かけられるなんて、私のような恋愛初心者には夢のまた夢だったのだから。
早くも浮かれ始めたことがバレないように、緩む頬を必死で隠す。こんなに誕生日が来るのが待ち遠しくなるなんて思わなかった。