目を丸くする私を他所に、とっても楽しそうに笑う奏さん。例えるとしたら、いつもは毅然と振る舞っている王子様が気の知れた人にだけ見せている素顔を目の前にしたような感じ、というのがしっくりくるだろう。
色気のあるオトナな彼が、天使のような笑顔を浮かべている。どうやらツボに入ったようで、しばらく笑いが止まらない。
(か、可愛い。こんな顔する人だったんだ。とても三十路とは思えない…、じゃなくて!)
「あの、奏さん。…これは、どういうことですか…?」
「っ、ふふ、ごめんね逢坂さん。まさかここまで上手くいくとは思ってなくて。」
「????」
「それ、ニセモノなんだ。ウチの子役からもらった、ただの“メモ帳”。」
「?!!!」
ピシッ…!と、凍りつく私。その隣で、榛名さんは無表情に目を細めている。
奏さんは、くすくすと笑って眉を下げた。
「いや、ごめんね。今まで一人の女の子に執着したりなんかしなかった律がすごく入れ込んでるみたいだったから、どういう子なのか確かめようと思ってさ。昨日はあまり話せなかったから、急遽“これ”を思いついて。」
「まさか、初めから私を“試す”つもりで呼び出したんですか?」
「んー、そうなるかな。本当に小切手を持っていくような子だったら、それこそ本気で“排除”しなきゃなあって思ってたけど。」
(怖い怖い…!)



