真っ二つに破られる封筒。ひらひらと目の前に舞う白い紙。とっさに立ち上がる私。
その“ひと破り”は、ここ数十分、私が様々なものを守ろうと苦悩とプレッシャーを乗り越えて出した答えを一瞬で無に帰す暴挙だ。
訳がわからない。今、何が起こった?
「ば、ば、バカバカ!!何してるんですか榛名さん!!小切手ですよ!いくらだと思ってるんですか?!!!!」
「っ、抱きつかれるのは嬉しいがそんなに揺すらないでくれ。これはただの紙切れだろう。」
「これだから金持ちはっ!ゼロが数えられないんですか?!!貴方のお兄さんの1000万ですよ?!!!」
するとその時、榛名さんは、すっと眉を寄せて私を見つめる。
「…まさか、気付いていなかったのか?よく見てみろ。」
「へっ?」
予想外の返答に動きが止まる。
彼に促されるまま、破り捨てられた紙を拾い上げた私。すると、目に飛び込んできたのは封筒から飛び出す“ニッコリマーク”と、その隣に綴られている可愛いフォント。
“こどもぎんこう”
「ーーふっ。」
その時、小さく吹き出すような声が聞こえた。
ぱっ!と顔を上げると、対面のソファに座り俯いた奏さんの肩が小刻みに揺れている。そして、私が全てを理解した瞬間、奏さんはついに耐えかねたように無邪気に声を上げた。
「あははっ…!っ、もうだめだ…!ふふっ!」



