ーーガチャン!!!
と、その時。突然、応接室の扉が開いた。
強引に開かれたその先にいたのは、人を一人殺めてきたと言っても過言ではないほど不機嫌な表情の“彼”。
「はっ、榛名さん…?!!」
目を見開いてその名を呼んだのも束の間。コツコツと部屋に入ってきた彼は、ドサ!と私の隣に腰を下ろし、庇うように肩を抱く。
思わず身体の温度が急上昇した瞬間、ジロ、と奏さんを睨みつけた彼は低く言い放った。
「ーー当事者を蚊帳の外にして取引とは、一体どういうつもりだ?」
「…早いな。まさかもう嗅ぎつけられるとは思わなかった。やっぱり、律の秘書は有能だね。」
「とぼけるな。何を言ったかは知らないが、場合によっては本気で怒るぞ。…奏。お前には昨夜の百合に対する“前科”があるんだからな。」
「ははっ、すごい嫌われようだ。お酒を入れればちょっとは本音をこぼしてくれるかと思っただけだよ。まさか潰れちゃうだなんて思ってもみなかった。」
と、奏さんが「ごめんね」、と私に視線を向けたその時。榛名さんが、テーブルの上にあった封筒に気付く。
「…!まさか、これで脅したのか。」
「人聞きが悪いな。“これ”を渡す代わりに律から離れるように交渉していただけさ。」
すっ、と封筒を手に取り、中を確認する榛名さん。すると数秒後、冷ややかな瞳をした彼は、流れるような手つきで封筒に指を添えた。
「ーーくだらん。」
ビリビリビリッ!!!
「あぁっ?!!!!いっ、1000万が?!!!」



