このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~


ソファに腰を下ろす彼に促され、対面するように座る私。まじまじと彼の名刺を見つめてしまう。


(榛名奏…。本当に、“ソウ”って名前だったんだ。ってか、ハルナプロの社長って。…これは現実…?)


確かに、言われてみれば切れ長の瞳は榛名さんによく似ている。ソウさんに初めて会った時に既視感を感じたのも、そのせいだったらしい。ふわり、と香る“バニラのような甘い匂い”。微かに感じるそれは昨日ドレスに移ったタバコと同じもので、“ソウ”と目の前の彼を結びつける確かな根拠となった。

それにしても、纏う“カリスマオーラ”といい、どことなく漂う“育ちの良さ”といい、かるく常人離れしている。直視出来ないほどのイケメンDNAは、さすが、としか言いようがない。しいて言えば、榛名さんよりもにこやかだが気怠げな“色気”が強めであり、榛名さんに負けず劣らず外見が美しいが故、有無を言わせぬ威圧感があるような気がした。


「…改めまして、お時間を作っていただきありがとうございます。えっと、は、榛名さんは…」

「奏でいいよ。昨日もたくさん呼んでくれただろ?」

「いえ…!すみません。そんな軽々しくお名前を呼ぶだなんて私にはもう…。今日はお仕事ですし…」

「あー…、タイアップの件ね。ごめんごめん。それは“口実”なんだ。君を呼び出すためのね。」

「えっ…?!」