このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~


**


タッ、タッ、タッ…!!


車を近くのパーキングに停め、私は律さんと共に路地を駆け抜ける。辺りは、閑静な住宅街が並ぶ平和な田舎町。夕方で日も暮れかけているせいか、街を歩いている人影もなかった。


「百合、家は?!」

「この先を曲がったら、すぐ見えます!…ほら、あの黒い瓦屋根の…!」


ーーと、路地を曲がった瞬間。私と律さんの目に飛び込んできたのは、家の前に停まる“黒塗りの車”。そして、玄関口で何やら揉めている様子のおばあちゃんと真人だった。

“間に合った”

しかし、安心するのはまだ早い。生存確認が出来たとはいえ、真人は数人の男を連れている。まさに借金の取立てに近い絵面に、背筋が震えた。


「助けなきゃ…!」


血相を変えて駆け寄る私。しかし、その肩を、ぐん!と律さんが掴んだ。引き止めるような仕草につい驚いて目を見開くと、彼は冷静な瞳で低く告げる。


「早まるな。奴らは刃物を持っているかもしれない。まずは警察に通報しよう。恐喝行為に、誘拐未遂、…奴らの仲間はハルナプロの防犯カメラにも映っているから証拠はあるだろう。動くのはそれからだ。」

「…!」