このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~


確かにそうだ。

借金を背負った私と紘太は、旧家から真人によって排除され、身寄りを失った。私以外でハルナホールディングスと繋がっている家族といえば、紘太しか思いつかない。

まさか、うまく真人の罠を躱せたのだろうか…?

と、そんな事を思った、次の瞬間。はっ!とした紘太の息遣いがスピーカーから響く。


『“ばあちゃん”は…?!』

「!」

『俺、実家出てから帰ってないし、会ったのもこの前の食事会が最後だよ…?!』


どくん!!


心臓が鈍く鳴る。

最悪の事態を想像し、血の気が引いた。

その時、律さんは、ガッ!と“ドライブ”にギアを入れる。


「いくぞ、百合。奴の狙いは、お祖母さんだ…!」


律さんの言葉に、素早く頷く私。

スマホを耳に当てながらシートベルトをし直した私は、紘太に向かって早口で告げた。


「紘太。一度電話を切るけど、何かあったらすぐに連絡して。身の危険を感じたらすぐに逃げるのよ。」

『分かった!…でも、俺よりねえちゃんの方が心配だよ…!絶対無茶しないで、律さんに守ってもらって。俺、天涯孤独とか絶対嫌だから…!』

「!…紘太を一人にはしないよ、絶対…!おばあちゃんのことは任せて。」

『うん…!気を付けて…!』


ブォン!と走り出す車。

紘太との通話を切りおばあちゃんに電話をするが、一向に出る気配がない。いつもなら、おばあちゃんは私からの電話は必ず出てくれていた。嫌な胸騒ぎがする。


(お願い、どうか、無事でいて…!)


ーーこうして、私は律さんの運転に身を委ね、生きた心地がしない時間が刻々と過ぎていったのだった。