このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~



ーーパッパーッ!!


「?!」


路地に響く、耳をつんざくようなクラクション音。

その場にいた全員の動きが止まった瞬間、大通りから、アクセル全開の“一台の車”が猛スピードでこちらへ向かって来ているのが見えた。

その勢いは止まる気配がない。まるで轢くのも躊躇わないようなその運転捌きに、思わず男達は路肩へ飛び退いた。


(ーーっ!!)


私はとっさのことに身動き取れず目を瞑るが、その車は颯爽と私の目の前で止まる。それは、“白のレクサス”。はっ!と救世主の正体を察した瞬間、その窓から待ち望んでいた“彼”の声が確かに耳に届いた。


「乗れ!百合!!」


それは、緊迫した表情の律さんだった。運転席からドアを開けるなり、半ばかっさらうように私を助手席へ引き込む彼。男達が追う間も無く、車は猛スピードで路地を駆け抜ける。

ーー来てくれた。

律さんが、私を助けてくれた。

安心からか、ぼろぼろと涙が止まらない。声も出せないほど呼吸が乱れた私は、シートベルトにしがみつくように泣きじゃくった。

やがて、追っ手を振り切った律さんは、近くの路地に車を停め、サイドブレーキをかける。ぎゅっ!と私を抱き寄せた彼の腕は温かかった。


「ーー怖かったな。」

「…!」

「もう大丈夫だ。」