このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~


するとその時。電話越しの真人の声が一変する。


『…お前、自分の立場が分かってないのか?こっちは、“お前ら”の人生を狂わすくらい、簡単なんだよ。』

「…!」


低く響く声。

眉を潜めた瞬間、奴の嘲笑うような耳障りな声がスピーカーから響いた。


『お前の両親も、俺に反発するから“あんな目”にあったんだ。大人しく金を渡してればよかったのに。』

(!!)


血の気が引いた。

心臓が鈍く音を立て、全身の体温が一気に下がる。嫌な予感が頭をよぎったその時、その予想は的中することになる。


『まさか、車に細工をしただけで死んじまうとは思わなかった。ちょっと事故を起こさせて痛い目をみさせるだけでよかったんだが。…まぁ、多額の保険金がかかってると思ったら、事業の借金で全部持ってかれて結局“無意味”だったけどな…!』


信じられない。

これは、悪い夢だ。

そう何度も思ったが、スマホから聞こえる不気味な高笑いは頭の中をガンガン攻め立てる。

ーーこの男が言っているのは、ただの脅しやハッタリではない。悪魔のような所業は、逢坂家の権力を後ろ盾に振りかざされた現実なのだ。怒りと悲しみで、どうしようもなく心が乱れた。今すぐ殴ってやりたいほど、負の感情が込み上げる。


「よく堂々とそんなことを言えたわね…!全てを警察に言うわ。絶対に許さない…!」

『ははは…っ!許されなくても結構だよ。それに、今はそこが論点ではない。…“お前の家族”と“見合い相手の御曹司”、どっちを取るかの話をしているんだ。』

「…?!」