**

「いいね。新作の広告デザインはこれでいこう。」


ーー律さんと別れた、午後十二時過ぎ。

都内のオフィスビルにあるハルナプロの社長室に再び足を運んでいた私は、奏さんのデスクの上に剃ったばかりのチラシと大判ポスターの見本を広げていた。

撮影の日程も順調に終わり、いよいよ、コスメの発表を待つだけとなった今日、奏さんとのビジネスパートナーとしての交流は一区切りつくことになる。

…これで当分、奏さんと会う機会もなくなる。最近はやっとお互いのことを知り、普通に話せるようになってきていたからか、なんとなく名残惜しさを感じてしまう。


「さて、これで打ち合わせは終わったかな。後はポスターの印刷と発表の時期を合わせるだけか。」

「はい!お世話になりました。もう、こうやってお仕事をすることもないでしょうし。」

「そうね。まぁ、プライベートなら会えるでしょ。俺たちは“兄妹(きょうだい)”なわけだしね?」

「…気が早いです…」