このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~


なんという自分本位な言い訳。

下心見え見えの男がよく使う常套句である。

案の定、今井は私の肩を離そうとしない。さらにあろうことか、そのまま私を引き寄せ肩を抱く。


「ほら、俺がいれば安心だろ?変な男に絡まれたら大変だからさあ〜」

(今、すでに変な男に絡まれてるんだけど…!)


ゴワゴワとしたスーツの感触、おじさん特有の匂い。怯みそうになるが、折れたら負けだ。表情に出さぬよう、しかし出来る限り強い力で、私は体を押しのける。


「あの、今井さん酔ってます?」

「いやあ?そんなことないよ。今日、そんな飲んでないから〜」


そう言いつつ、今井の顔は酔っ払いの“それ”だ。足取りは確かなようだが、意識がしっかりしている分、タチが悪い。泥酔して寝るレベルなら、そっ、と道端に置いて逃げられたのに。


「いやいや、酔ってますって。今日はまっすぐ帰った方がいいですよ。顔、赤いですし。」

「んー…、じゃあ、ちょっと休憩に付き合ってよ。今日だけでいいからさあ〜」

「?!」


目に見えたのは、“ホテル”の看板。
嫌な胸騒ぎとともに、数時間前のミユキの声がよぎる。


“ーー…でも、気をつけな?あのオヤジ、悪い噂あるし。”


“アフターのサービスを越えてお気に入りのキャバ嬢に手ぇ出すから。”