このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~



トサ、と優しく降ろされる体。廊下のすぐ右側にあったのは脱衣所だった。曇りガラスの向こうに大きな浴槽が見える。

“初めて”の私に気を遣ってか、風呂に入る猶予を与えてくれたらしい。はやる気持ちを堪え、なんだかんだ彼は甘かった。


「…シャワー終わったら来い。俺も入るから。」

「…!はい…」


少し余裕のない声。

彼の気配が廊下の向こうに消えると同時に、急かされたように服を脱いだ私。勝手が分からないが聞いている暇もない。なんとか体を洗い終え、やや警戒気味に浴室を出る。用意されていたのはタオルだけ。考えた末、元のワンピースを着てリビングに向かうと、はだけたシャツでソファに座る彼と目があった。


「…着たのか。どうせすぐ脱がすのに。」

「っ、脱……!」

「寝室へ行ってろ。その扉の奥だ。」


すれ違いざまに告げられた言葉。

ややあって、シャワーの音が聞こえ始めると、緊張感が高まった。おずおずと寝室を覗く私。視界に映ったのは、シックな家具と枕元に置かれたお洒落なランプ。そして、一人で寝ているにしては大きすぎるダブルベッドだった。

ゆっくりと近づき、腰を下ろすと、その反発はなんとも言えない心地よさだ。きっと、私がいつも寝ているベッドとは、質も値段も格段に異なる代物だろう。