このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~


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ーーやがて、車に乗ること三十分。

見上げても最上階が見えないほどの高層マンションの前に私はいた。オートロックのエントランスを抜け、エレベーターのボタンを押す彼。

部屋に向かう間、終始落ち着かない私は、見たこともない高級な設備をきょろきょろと見回す。チカチカと数字が点滅し、扉が開いた。誰もいない廊下をコツコツと進む律さんは、角部屋の前で立ち止まる。


ーーガチャ。


重厚な音とともに開くドア。

白い大理石が敷き詰められた玄関は、私の知るものより遥かに広い。奥に続く廊下にはいくつも部屋があるようで、その先には夜景が映る大きな窓と広いダイニングが見えた。


(…す、すごい、さすが“セレブ”って感じのお部屋……)


ーーと、私が初めてのお部屋訪問にドキドキ胸を高鳴らせていた、その時だった。


ぎゅっ…!


「!」


不意に背中から抱きしめられる体。はっ、とする間も無く首筋にキスを落とされ、ぞくり、と甘い痺れが走る。


「…り、律さん!ここ、まだ玄関…!」

「…キスだけ。」


トン、と壁際に追いやられる。優しくも容赦ない口付けは、私の思考をかき乱した。


「…っ、んん……、ぁ、りつ、さん……っ」

「……っ…」


ぐらり、と視界が揺れた。

軽く抱き上げられ、コトン、とヒールが廊下に落ちる。


「ちょっ…!律さん、どこに…」

「ん…?ベッド。」

「っ?!待ってください、お風呂とか…っ!」

「明日一緒に入ればいい。」

「だっ、ダメですよ!…さ、最初はちゃんとしたいんです。」

「…!」