所構わず口説き倒す彼に、私は思わず辺りを見回してしまう。他の人に聞かれたらと思うと、恥ずかしすぎて逃げ出しそうだ。律さんには、私がこんな風に見えているのだろうか?なんて、図々しい勘違いをしそうになる。…本当に、この人は心臓に悪い。

…そして、結局、例のピンクゴールドのネックレスに決めた私は、律さんの勧めですぐにネックレスをつけてさせてもらうことになった。車に戻り、器用な手つきで鎖を繋ぐ彼の手にドキドキしながら、身を任せる。

運転席から身を乗り出して私へと手を伸ばす彼から、ふわり、といつもの男らしい香水の匂いがして、とくん、と胸が鳴った。近付かないと分からないほどの香りが色っぽい。

やがて、すっ、と私から離れる律さん。見上げた私の視線を、彼はまっすぐに受け止めた。


「綺麗だな。」


そう言って微笑んだ彼の方が何倍も麗しいなんて、きっと本人は気づいていないんだろう。


(…私、デートが終わるまで心臓持つかなあ…?)


ーーこうして、首元に光る小さなダイヤをサイドミラーで見つめながら、二人を乗せた車は夜の帳に包まれ始めたコンサート会場へと向かったのだった。