美月は誰かに似ていると思った。
「寮生活めっちゃドキドキやねんなぁ!今までずっと、オカンとお婆ちゃんと暮らしてたから寂しいわぁー」
そう素直に“寂しい”って言える美月を可愛いと思った。
「そっか。」そう微笑む私に美月は急に慌てて
「あっ!いや。でも、えーと。でも、私のオカンもお婆ちゃんも、怒ったらめっちゃ怖いねん。」
急に早口になる美月。
あぁそうか。入学式の私の挨拶を聞いてたから自分が家族の話をしたら悪いと思ってるんだと、気付いた。
美月はいつもそうだったね。
気が強くて素直じゃなくて、でも人の心の痛みには人1番敏感で、いつも太陽みたいな笑顔で私の傍にいてくれたね。
陽介と美月は似ていた。
太陽みたいな笑顔で笑うところが。
慌てふためく美月を見ていると可笑しくて笑ってしまった。
「美月の家族の話もっと聞きたい!」
自分でも驚いた。誰かの家族の話を聞きたいなんて思った事が無かったから。
でも美月の話は聞きたいと思った。
「ほんまに?うちの家族の話なんてほんま、おもんないで?」そう言いながらも少し嬉しそうな椿。
「うん!聞かせ…」
ガラっと教室の扉が開くなり
「椿ー!帰るぞ!」そこにはニカッと笑う陽介がいた。
まだ教室に数名残っていたクラスメートが少しざわつく。
私は額に手を当てて溜息をついた。
あれほど昨日言ったのに。
