例え、捨てられたとしても私は会いたい。9歳まで大切に育ててくれた。
そりゃ寂しい思いも辛い思いもたくさんした。それは私が”いい子”じゃなかったから。
今の私なら、きっとママは抱きしめてくれる。
「僕はね、大人になったら世界で一番憎いやつを・・・殺しにいくよ」颯介が言った言葉は残酷な事なのに、まるで何でもない会話をしているみたいに喋った。
「・・・颯介の憎い人は誰・・・?」
恐怖で肩が震えているのに、颯介から離れる事が何故か出来なかった。
フっと笑って颯介は自分の鼻に人差し指を当てた。
「秘密。その時がくれば分かるよ」
颯介が殺したい程憎い人――――――。
その時は想像も出来ずにいた・。
「椿はさ、母親に会ってどうしたいの?本当はさ憎んでる筈だ。何で自分は捨てれられたの?ってそう思ってる」
さっき答えなかったからなのか、同じ事を聞いてくる颯介。
憎んでなんかない。憎んでなんかない・・・。私は・・・本当の気持ちは…もっと前から気付いてた。
「・・・ママなんて・・・嫌い・・・何で私を2度も捨てたの・・・私っ・・・いい子にしてたのに・・・」
嗚咽が出る。本当はこんな事言うつもりじゃなかった。泣くつもりなんてなかった。
そんな私を抱き寄せる颯介。不思議と嫌な気持ちにはならなかった。
私の頭をクシャっと触り
「可哀そうな椿。一生懸命頑張ったのに捨てられ、裏切られ、誰も助けてなんてくれない。可哀そうに・・・」
誰も助けてくれない―――――――
