そんな私の手を握りしめた男はそのまま自分の体にグット引き寄せた。

必然的に男の胸に飛び込んだ形になった。

『大丈夫だ。』

たった一言だけなのに、何故だか安心してしまった。

それからあっという間に私の僅かな荷物は一つにまとめられ、3年間すごした星の海を後にする事になった。

門の所には遥先生と院長先生と仲良くしてくれてた、翔君、桜ちゃんが来てくれた。

遥先生は目にいっぱいの涙を浮かべて、私を抱き締めてくれた。

『莉愛ちゃん。元気でね。遥先生の中では、貴方は莉愛ちゃんよ。』

翔君と桜ちゃんは手紙とクマのヌイグルミをくれた。

『莉愛ちゃん行っちゃんだね。元気でね!また会おうね!』

男はそんな別れを惜しむ私達にイライラした声で

『椿、車に乗れ。』と言った。

世の中にこんは大きい車があるんだと思う程の黒塗りの車が園の前に止まっていた。

すると、運転席からシルバーの眼鏡をかけた男が降りて来て後ろの扉を開き

『椿様、お乗り下さい。』

と私には微笑みかけた。

私はもう一度、皆の顔を見る為に振り向こうとした時に男が言う。

『椿、振り向くな。そのまま車に乗るんだ。』

私は、何故か男の言う通りに振り返る事なく車に乗り込んだ。

バタンと閉められた車から皆と男が見えた。

男は皆に何かを言っているようだったけど
何も聞こえなかった。

数分すると、再びドアが開けられ、男が乗り込んで来た。

『本庄、車を出せ。』

とシルバーの眼鏡をかけた男に命令をする。

すると、静かなに車は走り出した。

車の中に静寂が響き、さっき貰った手紙とクマのヌイグルミをギュッと握りしめた。

すると男が胸ポケットから茶色い封筒を差し出してきた。

『何これ?』

男は私を見つめて口の端を少しあげて

『お前が売られたお金10万円だ』