そう言って颯介は、私の頬から手を離した。





“泣いても誰も助けてくれない”そう言った貴方は人知れずの苦しみを1人で抱えていたんだね。





『でっでも・・・陽介は助けてくれるって!』





私の言葉に颯介はチラリとこちらを見て





『そう。それは楽しみだね』そう微笑んでいるのに、目の奥は全く笑っていな事に気付く。





離れなきゃダメだ。これ以上一緒に居てはいけないと、何かが信号をだしている気がしたけど、私は動けなかった。





もう少し一緒に居たい、そう思ってしまった。





『椿はさ・・・自分の幸せと人の幸せどっちが大事・・?』





唐突な質問に戸惑ってしまった。





『例えば、陽介の幸せと自分の幸せどっちを選ぶ?』





そう言ってほほ笑む颯介に僅かな月の灯りが照らした。





自分の幸せと陽介の幸せ・・・?



今日会ったばかりだけど、太陽の様な笑顔で笑う陽介の顔が浮かんだ。





『私は・・・もし選ばなきゃならないなら・・陽介の幸せを願うよ!』





そう言うと、目を細めて私の目をじっと見てくる。





『本当に?本当にそう思っている?』





『お・・思ってるよ!』





さっきより少し大きな声を出してしまった。





颯介はそんな私に対して





『嘘だね。椿はそんな奴じゃない。椿は・・・こっち側の人間だ』





そう言ってほほ笑む颯介にゾッとした。