『えっ・・?』
捨てられてないよ
陽介の言葉が頭の中を木霊する。
『だってさ!この世の中に自分の子どをが嫌いな親なんていないって。何か事情があってまだ迎えに来れないだけだよ!』
と近くにあった石を拾うと立ち上がって、川に向かって投げる。
石は円を数個描き、沈んでいった。
クルリと振り向いた、陽介は笑顔だったけど、心なしか悲しそうな顔をしていた。
『俺は3歳の時に、施設に預けられた。母さんと一緒に写っている写真と、手紙を俺のポケットに入れて施設の前に置いて行かれたんだ。』
さっき信也さんがそんな事言ってたけど、陽介はどうしてそんなに普通に語れるの?
『その手紙にははさ、たくさんの”ごめんなさい”が書いてあった。でも必ず迎えに行くって。俺が16歳の誕生日を迎えた時にこの河原で待ってるって。』
そう言って、ニカっとまた太陽みたいな笑顔で笑った。
数時間前まで、ママと過去を捨てると思っていたのに、そんな陽介の笑顔を見ると
無性に、ママに会いたくなったし、信じたいと思った。
奇跡を信じたいと。
願えば叶う事を。
『俺は信じてるよ。だから椿も信じて待ってようよ。マリア様はきっと見てるよ。椿はいい子だから』
と微笑みかけてくれる。
でも私は・・・
そんなに強くもないし、いい子でもない。
『私には・・・そんなの無理だよ。だって・・・私・・・私は・・・・』
私は・・・??
何を言いたいのだろうか・・・??
『椿、もし今自分のいる場所が奈落の底だと思っているなら俺が助けるよ。』
