『では、惜しくも2位だった西園 陽介選手にお話を聞こうと思います!』そうマイクを向けられた陽介はマイクを通さず、地声で
「クッソーーーーー!」そう叫ぶと、アナウンス部の生徒からマイクを奪い取ると
「えーー…すみません!負けちゃいました!生徒会長として不甲斐ない!そして、1人の男として…かっこ悪りぃ…」そう言って顔を覆った。
運動場がシーンとなる。
アナウンス部の生徒も何も言えずにいると
「陽介先輩!ドンマイ!でも格好よかったよ!」そう声を出したのは、隣にいた美月だった。
思わず美月の顔を見ると満面の笑顔だった。
美月の声の後に次々と、声が挙がる。
「そうだそうだ!格好よかったぞ!」
「生徒会長!グッジョブ!」
「陽介!お疲れ!」
様々な声がどんどん広がり、最後は大きな拍手が起こった。
私は…
拍手出来ずにいた。
そして、心の中にドロドロした感情が生まれる。
必死にその感情を掻き消そうとしても、次から次へと溢れてきた。
ズルイ
何で?
どうして?
颯介が1位だったじゃん
「椿?どうしたん?」美月の声でハッとする。
私、何て事思ってんだろう。
陽介はこの日の為に、一生懸命頑張ってたの知ってたのに。
どんなに疲れてても、私に優しい笑顔を見せてくれていたのに。
ごめんね。そう心の中で呟いた。
そして、皆に遅れを取りながら陽介に向かって大きく拍手を送る。
拍手に包まれた陽介が先程とは違い笑顔だった。
そして、私と目が合うとVサインを送ってくる。
私も真っ直ぐ陽介を見て、笑顔で頷く。
こうして、体育祭と2人の戦いは幕を閉じた。