『よしっ!じゃあ買い物に出かけよう!』と陽介は満面の笑みを浮かべた。


買い物なんてした事ない。


施設で貰えるお金は使わずに貯金をしていたし、服は寄付される物ばかり着ていた。


『私、買い物なんてした事ない。』


とポツリと呟く私に、陽介は目をまん丸くして笑った。


『じゃあ今日がデビュー戦だね!俺が椿に似合う服選んでやるよ!』


君は私に色んな“初めて”を沢山くれたね。








『うわぁーーー!人が一杯いてる!』


陽介に連れて来て貰った街にはたくさんの人で溢れていた。


驚いたのは一歩、街に入ると色んな人が声をかけてきた。


『陽介じゃん!何してんの?ってか誰?その子?』


『陽!久しぶり!』


『陽介君!また遊ぼうね!』


『陽介!今度バスケの試合のヘルプに入ってよ!』


『陽ちゃんーあのゲームのステージどうやってクリアするのー?』


その度に陽介は立ち止まり、笑顔で答えていた。


何より嬉しかったのが


『こいつ、椿!俺の妹になった!仲良くしてやって!』


と私の事を紹介してくれた事。


陽介の周りにはいつも人が集まり、笑顔が耐えなかった。


色んな人と話しながらようやくショッピングモールの前に着いた。


その時フとショッピングモールから少し行った所に薄暗い路地があるのを見つけた。


賑やかな街とは違って、静寂と暗闇に包まれていた。


『陽介君、あそこは街じゃないの?』


と指さす私に


陽介から笑顔が消えて真面目な顔付きで


『椿、あそこには入っちゃダメだ。あそこは、世界が違う。』


と答えた。


世界が違う。


その時はその意味が分かっていなかった。


『ってか陽介君とか辞めて!呼び捨てでいいからさ。』


とはにかんで言う。