何で?どうして?そんな事ばかり頭に浮かぶ。
颯介は少し照れた表情で頭をポリポリと掻いている。
木下先輩が顔を赤らめながら、颯介に駆け寄って行く姿を見て、私はグッと拳に力を込めた。
わーーーと運動場全体が盛り上がる。まだ他の3年生達が、悪戦苦闘しているにも関わらず、全校生徒の目は2人に向けられている。
『おっーと!ここで、木下 美香さんが西園の前に到着しました!さぁ、西園は木下さんに何を伝えるのかー!?』アナウンス部の生徒が必死に場を盛り上げようとしている。
『ごめんね?来て貰って』とニッコリと微笑む颯介に顔を赤らめる木下先輩。
さっきは、陽介と仲良くしている私に突っかかって来た癖に結局、顔が整っている男なら誰でもいいのか。
そう思った。
『大丈夫!』2人の間にはマイクが向けられているので、2人の会話は運動場全体に筒抜けだ。
『前々から、木下さんの事気になっていてさ…』
その颯介の一言で更に歓声が大きくなる。
『…私も…』とぬけぬけと言う木下先輩が堪らなく苛つく。
『男子の間で可愛いって評判でさ』と言う颯介に対して
「いいぞーー!西園ー!」
「カップル誕生かーー!?」
「見せつけんなー!」
周りの生徒の冷やかす言葉が飛びかう。
『…ありがとう!』そう口を押さえる木下先輩。
颯介は私をからかっただけだ。“逆襲”なんて考えていなかった。私に期待をさせて、めでたいカップル誕生の瞬間を見せつけられるだけだったんだ。
もう見たくない。聞きたくない。そう思い、救護所から離れようとした時、いつもの冷たい颯介の声が聞こえた。
『まぁ…よく見ると、超絶ブスだね。その顔見てたら反吐が出るよ』そういつもの冷たい微笑みを見せたんだ。
