太陽と月


『位置についてヨーイ』



パーーーン!


ピストルの音で一斉に3年男子がスタートを切る。


1位を独走しているのは、さっきまで気怠そうに立っていた颯介だった。


嘘…。
私は思わず立ち上がり、颯介を目で追う。


『おっとー!1位を独走しているのは、3-Cの西園 颯介!』


ワーーと歓声が上がる。


颯介は次から次へと、障害物を突破した。


他の生徒が、悪戦していた小麦粉の中から飴玉を探すブースも難なくクリアしていた。


『1位独走の西園!ついに最後の難関である借り物ブースに辿り着きました!果たして中に書かれているものは何なのでしょうか?』


私は1位を独走している、颯介を凄いと思う反面、既にゴール間近である事が胸をモヤモヤさせた。


結局、何も起こらず無事ゴールして終わってしまうのかと思ってしまう自分がいた。


これで良かった。逆襲なんて考えたらダメだ。私はそう思いクラスに戻ろうとした時、


『おっと!ここで、西園が動き始めた!』とアナウンスが耳に響く。


私は足を止め、颯介に目を移す。


颯介はそのままアナウンス部に、歩いて向かっていた。


どうしたんだろ?紙の中身は何だったんだろう?


颯介はアナウンス部に行くと、生徒一人からマイクを借りている様だった。


『おっとーここで西園!我ら放送部のマイクを奪還しに来ました!借り物の内容はマイクなのでしょうか!?』アナウンスの声で運動場が笑いに包まれる。


借り物はマイクだったんだ…。私はそう思い、もうクラスに戻ろうした時…


『えー!ここで僕の元に来て欲しい子が居てます!』


マイクを通した颯介の声が聞こえた。