2人で救護係の生徒に連れられ、救護所になっているテントに向かう。
石田さんと別々のブースに案内をされ、足の手当てをして貰っていると
「椿!」私を呼ぶ声がした。
声の持ち主は陽介だった。
ハァハァと息を切らし私の前に立つ。
「陽介…!」陽介の顔を見ると何だかホッとする自分がいた。
「さっきの椿の出番見れなくて、後で転けたって聞いて!大丈夫か?」私の傍にしゃがみ込み顔を心配そうに覗き込んでくる。
生徒会長として忙しいのにこうして、私の為に走って来て心配してくれる陽介がたまらなく愛おしいと思った。
「うん。大丈夫だよ。大した怪我じゃないから、」そう微笑む私を見て
「良かったー」と安心した様に陽介も笑ってくれた。
陽介は私の横のパイプ椅子に座り、胸元をパタパタさせると
「あっちー。」と舌を出す。
ここまで走って来てくれたんだね。
私にはそれだけで、十分嬉しく思った。
「陽介…ごめんね?」突然の私の謝罪にキョトンとする陽介。
「どうした?」
「…お弁当…。あのね…来る途中で転んじゃって、中身グチャグチャなっちゃった」と嘘をついた。
本当の事言ったらきっと陽介は傷つくから。
だから嘘をついた。
「はぁ?どんなけ転ぶんだよ!?ってかその時は怪我をしなかった?」また心配そうに私を見る。
チクリと胸が痛んだけど
「うん。大丈夫だよ。」と笑顔を作った。
「気をつけろよ?お弁当は残念だけど、いつでも食えるから気にすんな!」とニコっと笑う陽介を見てると、本当の事を言ってしまいたい衝動にかられた。
『えー生徒会長、生徒会長、至急、生徒会ブースにお戻り下さい。繰り返します。生徒会、生徒会、至急……』
アナウンスが流れ陽介がハァと溜息をつき、
「お呼び出しされたから、俺行くわ!あんまり無理すんなよ」と私の頭を撫でて、その場を去って行った。
私はそんな陽介の背中をいつまでも見続けていた。
私はどうして嘘をついたんだろう?
嘘をついた直ぐ後にどうして本当の事を言いたかったんだろう?
嘘をついたのは…颯介の言葉が残っていたから---。
“さぁ椿、馬鹿な女共に逆襲するとするか!”
その事を陽介に知られたくなかったからだ。
颯介が企てている、“逆襲”が何であるかを、心の中で期待している、醜い自分を知られたくなかったんだ----。
