そう言うと、陽介は大きく伸びをして


「もー眠たさ限界…。俺は寝る!」と言ってベッドに潜りこんで行った。


私はどうしたら良いか分からず、その場に立ちすくむ。


すると陽介は、ベットの脇に置いてるクッションをポンポンと叩いた。


ここに座れって事?そう思い、クッションの上に座ると丁度、陽介と目線が合う形になった。


何だか照れてしまったけど、陽介はウトウトとしていたので、変な緊張はしなかった。


「…小さい頃さ…父さんが寝れるまで傍に居てくれた。父さんがそれをしてくれる時は…俺が辛い思いをした時だけだったけど」まるで独り言の様な口調で陽介が話し始めた。


私は、うんと返事をするだけだった。


「物心ついた時は、1人で寝ていたんだ。…それは颯介もそうだった。初めは怖かったけど…段々慣れてきてさ…」


「うん…」


「その頃には自分は…父さんの養子だって事や母さんの…事、全部知っていたんだ…」


「うん…」


「ある日さ、学校の子に心霊の怖い話聞いたんだ…その日の夜は怖くて寝れなかった。」


「うん…」


「その時、父さんは一緒に寝てくれた。颯介も一緒にさ…」


「うん…」


「…いつの日だったか近所の子に貰われ子ってからかわれた時あったんだ。悲しくて眠れなかった…時も、父さんが寝れるまで傍にいてくれた」


「うん…」


「…先に颯介がコマ無しの自転車乗れ時は悔しくて…寝れなかったけど父さんが傍にいてくれた…」


「うん…」


「あっ椿…俺の事、甘えたのファザコンだと思ってるでしょ?」そう言われたけど


「思ってなんかないよ。」そう嘘なく言った。


「これ…ぜってーに内緒だけど、颯介も小さい頃はそうだったんだよ…」とクスっと笑った。


「うん…」


「今日はさ…凄く怖かったんだ。久しぶりに怖いって心から思った…」


「うん…」


「もし…椿に何かあったらどうしようって。もし…椿が傷つけられたらどうしよう…。居なくなったどうしようって。そう思うとたまらなく怖くなった」そう言って私に手を伸ばしてきた。


私はその手を握り返した。


「…うん…私は陽介がいてくれたから大丈夫だったよ」そう言うと陽介はニコっと笑い


「暫くこのまま手繋いでて?ちゃんと居るって証が欲しいんだ…」


「…うん。ここに居る」握った手に力を入れたら安心した様な表情で、陽介は目を閉じた。