こんな顔で笑う颯介を変えたのは一体何だったんだろう?
もうこんな笑顔で笑う日は来ないのであろうか?


そう考えたけど、直ぐに考える事を辞めた。


颯介の事を考えると、自分の中に眠っているドロドロとした感情が溢れ出す感覚に陥る。


陽介は写真立てを元の位置に戻し、隣の写真立てと少しスペースを空けた。


「ここには4人で撮った写真を置きたい」そう笑った。


4人って…。もしかして。
口には出さなかった私の思いを、陽介が言う。


「父さんと颯介と俺と…椿!皆、俺の大切な人だから」




ねぇ、陽介…。君はどんな時でも、何があっても、私を大切に大切にしてくれたよね。


私はそんな君をどれ程傷つけたんだろう…。









「あー眠い…そろそろ…」陽介はそう言うと小さく欠伸をした。


「そっそうだよねっ!そっそろそろねね寝る!?」急にテンパって上手く口が回ってない私をキョトンとした顔で陽介が見る。


私は何故か凄く緊張していた。さっきは安易に引き受けたけど、いくら兄妹と言っても、年頃の男の子の部屋に居る訳だし。


そもそも血が繋がっていない訳だし。


いや、でも戸籍上は兄妹か…。


でも…。いや…。手繋いだりしてるしな…。

1人で勝手に色々と考えてると

「椿!何かやらしーーい事考えてる?」とケラケラ笑っている。


「なっ!そんな事考えてないよ!陽介の馬鹿!」とバシッと陽介の肩を叩いた。


すると陽介は肩を押さ顔を歪める。


「っつ…」


もしかして、怪我してるところをと思い


「ごめん!大丈夫?痛かった?」と陽介の顔を覗き込む。


「なーんてね!」と舌をペロリと出した。


悪ふざけをする陽介を見ていたら、自然に笑顔になれた。


「やっと笑ってくれた」そう優しい目で私の髪の毛をクシャッとする。


「え…?」


「さっきから椿、笑わないからさ。俺は椿の笑った顔が好きだよ。」
そう微笑んでくれた。