お父さんが私の髪を撫でながら、教えてくれた。
「竹生島で足を滑らせて琵琶湖に落ちたそうや。でも、落ちたのが水面でよかった……。おかげで、奇跡的に、どこも怪我はないって。」
「どこも?……出血なし?」
驚いてそう尋ねた。
怪我だけじゃない、あれだけ血にまみれてたのに……。
「ええ。仏さまが守って下さったのねえ。……どこか、痛むの?」
お母さんにそう聞かれて、私は意識して、両手両足を動かしてみた。
……どこも、痛くなかった……。
アレは、すべて、夢だったのだろうか。
イザヤとの日々も、妊娠も出血も、矢傷も……ドラコを殺してしまったことも……。
ぶわっと涙が溢れた。
「まいら?」
「痛いの?」
本気で心配してくれる両親の存在が、こんなにもありがたく……安心できるって、知らなかった。
私は、両親の腕を掴んで、泣いた。
両親は困惑していたけれど……私の背中を撫で、腕をさすり……気の済むまで泣かせてくれた。
***
面会時間終了を告げるアナウンスが流れた。
とりあえず、今夜は病院で一泊して、明日、念のために検査をしてから退院することになるらしい。
お母さんが病室に泊まりたいと申し出たが、完全介護だからと断られ、渋々お父さんとホテルに戻って行った。
看護師さんが薬を持って来てくれて、点滴の針を抜いてくれた。
独りになったら、また涙が出てきた。
私の身体には、確かに傷も……妊娠した形跡もなかった。
髪も爪も、伸びてない。
私は、わずか5時間ほど気を失っていただけらしい。
……1年以上、過ごしたはずなのに……。
あれは、全部、夢だったということだろうか。
思い出すと、こんなに苦しいのに?
この記憶が想像でしかないなんて……信じられない……。
でも、矢傷……ないよねえ……。
掛け布団をめくり、病院から借りてるらしい患者用の甚平みたいなパジャマの裾をまくり上げた。
……やっぱり傷はない。
痛くも痒くもない。
夢……だったのか……。
音もなく、ドアが開いた。
「まいら。大丈夫け?」
低い声。
顔を上げると、廊下の光を後光みたいに背負って、孝義くんが立っていた。
まるで仏様だ。
……びっくりしたけれど……何となく、来てくれるような気がしていたかもしれない。
「竹生島で足を滑らせて琵琶湖に落ちたそうや。でも、落ちたのが水面でよかった……。おかげで、奇跡的に、どこも怪我はないって。」
「どこも?……出血なし?」
驚いてそう尋ねた。
怪我だけじゃない、あれだけ血にまみれてたのに……。
「ええ。仏さまが守って下さったのねえ。……どこか、痛むの?」
お母さんにそう聞かれて、私は意識して、両手両足を動かしてみた。
……どこも、痛くなかった……。
アレは、すべて、夢だったのだろうか。
イザヤとの日々も、妊娠も出血も、矢傷も……ドラコを殺してしまったことも……。
ぶわっと涙が溢れた。
「まいら?」
「痛いの?」
本気で心配してくれる両親の存在が、こんなにもありがたく……安心できるって、知らなかった。
私は、両親の腕を掴んで、泣いた。
両親は困惑していたけれど……私の背中を撫で、腕をさすり……気の済むまで泣かせてくれた。
***
面会時間終了を告げるアナウンスが流れた。
とりあえず、今夜は病院で一泊して、明日、念のために検査をしてから退院することになるらしい。
お母さんが病室に泊まりたいと申し出たが、完全介護だからと断られ、渋々お父さんとホテルに戻って行った。
看護師さんが薬を持って来てくれて、点滴の針を抜いてくれた。
独りになったら、また涙が出てきた。
私の身体には、確かに傷も……妊娠した形跡もなかった。
髪も爪も、伸びてない。
私は、わずか5時間ほど気を失っていただけらしい。
……1年以上、過ごしたはずなのに……。
あれは、全部、夢だったということだろうか。
思い出すと、こんなに苦しいのに?
この記憶が想像でしかないなんて……信じられない……。
でも、矢傷……ないよねえ……。
掛け布団をめくり、病院から借りてるらしい患者用の甚平みたいなパジャマの裾をまくり上げた。
……やっぱり傷はない。
痛くも痒くもない。
夢……だったのか……。
音もなく、ドアが開いた。
「まいら。大丈夫け?」
低い声。
顔を上げると、廊下の光を後光みたいに背負って、孝義くんが立っていた。
まるで仏様だ。
……びっくりしたけれど……何となく、来てくれるような気がしていたかもしれない。



