ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

手当したら、また……元気になるよね?


そう信じたいのに、ドラコの部下たちが号泣してる。

神に祈りを捧げ、イザヤを、ミシルトを呪い、私を……仇と、認識したようだ。



私は、ずるずると後退した。



イザヤが私の手を引っ張り上げて、立たせてくれた。

そのままイザヤは私を担いで走った。




私たちは桟橋から船に乗り込んだ。

イザヤが猛スピードで船を漕いだ。



「……追ってこないな。」

いつまでも動かない一団に、安堵より訝しさが勝っているらしいイザヤがつぶやいた。



返事をしない私に、イザヤが言った。


「気休めは言わぬ。そなたの気持ちは、よくわかる。私たちは同罪だ。」



私は、胸を抑えてイザヤを見た。


「ドラコ……死んでないよね?」



イザヤは目を伏せた。


「……。」


答えはなかった。




浜辺を見ると、ドラコの部下たちは、まだそのまま……泣いているようだ。


……死んだ……ということだろう……。


いや、違う。

私が、殺してしまったのだ。




「リタ……、ティガ……どうしよう……。ごめん……。」


謝っても取り返しのつかないことをしてしまった。


もうすぐドラコの子供が生まれるのに。



「こんなことになるなら、最初から、ドラコの要請を受ければよかったな。……どうせなら、ドラコとともに戦いたかったのに……まさか、この手で(あや)めてしまうとは……。皮肉なものだ……。」

イザヤの自嘲が、悲しかった。



「……もしかして、ドラコ、さっき……鎧を着てないだけじゃなくて、……剣も持ってなかった?……私たちを、保護しようと駆け付けてくれたのかな……。」


肩を掴んだドラコの手は、力強く、温かかった……。



イザヤが沈鬱にうなずいた。

「そうだろう。……役目上、討伐軍を指揮してはいたが……ドラコは、私だけは逃がそうとしていた。私が、この地に戻って来られたのも、ドラコのはからいだろう。」


「……ドラコ……。あんなにイイヒトが、どうして……死ななきゃいけないの……こんなことで……私たちのせいで……。」

私は、両手をじっと見つめた。


手だけじゃない。

血に染まった己の酷い姿に、また吐き気がこみ上げてきた。




ずるりと、イザヤの右手からボートのオールが滑り落ちた。



「イザヤ?」

「……う……。」


イザヤは真っ青だった。