ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

私は、立ち上がる血の匂いに吐き気を覚えて、またうずくまった。



「まいら!逃げよ!早く!」

どんどん増える敵兵をバッサバッサと斬りつけて、イザヤは豪快に立ち回り応戦していた。


気がつけば、雑魚ばかりじゃない。

明らかに高価そうな甲冑の騎馬兵団も駆けつけていた。


きりがない。

気持ちが挫けてしまいそう。


イザヤと逃げたいのに……独りじゃ意味ないのに……。



私は、哀れな血塊となった兵士から剣を奪った。



体力もなければ、足も痛い。

イザヤのように力任せに剣を振るうことはできない。


でも接近戦なら……刺せる。

加勢はできなくても、イザヤの足手まといにはなりたくない。



しかし、現実は残酷だった。


いつの間にか、私の後ろにまた敵が迫っていたらしい。


ぐいと肩を掴まれて、

「いやっ!」

と、声を上げてしまった。



「まいら!」

イザヤが突進してきて、勢い良く剣を突き出した。


同時に、私もまた、無我夢中で剣を水平に払った。



「え……。」


イザヤと私の2人から同時に刺され、斬り付けられた敵の驚いた声に、聞き覚えがあった。




振り返ると、私たちが剣を振るった敵は……ドラコだった。




「ドラコ!?嘘!ごめんっ!」


てか、何で、金の甲冑着てないの!

慌てて剣を手放した。



イザヤは、呆然として突っ立っていた。



ドラコは、脇腹を抑えた。


血が吹き出すように、流れている。



「……油断した。……まさか、こんな……。」


「ごめん!手当!救急車!病院!ドクター!助けてっ!」


もちろん、この世界に救急車なんて、ない。


ドラコの部下が大慌てで止血しようと試みているが、……腸が……はみ出してる……。


私はとても直視できず、顔を背けて……吐いた。




イザヤが、我にかえったらしく、私を庇ってくれた。



「……右目を、言い訳にするのは、なさけないが……イザヤが……見えなかった……。」

言葉を発するのもつらそうに、ドラコはつぶやく。


……片目が見えないこと、内緒だといってたのに……。

もはや死を覚悟したのだろう。



「……行け……。」

ドラコは私とイザヤにそう言って、目を閉じた。



死んだ、とは思いたくない。

ただ、ショック状態で気を失っただけ。