ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

イザヤは、ふたたび

「子供……私の……子供……」

と繰り返して、泣きそうな顔になってしまった。




……喜んでない……。


うわ。

めっちゃショック。



なるほど、こういうことね。

リタが怖がってた意味が、よくよくわかったわ。


まさか自分が体験することになるとは。




私は、イザヤから手を離して、茫然と突っ立った。



イザヤは、ただ

「すまない。」

と、謝って唇を噛んだ。




絶望、だ。

なんだ、これ。


さすがに、浮上できそうにない。


きっついわ……。






ポコッ。




……ん?

なんか、お腹……動いた……。





ポコ……。




さっきより緩慢だけど、これは……胎動?




思わず、お腹に両手をあてがった。


赤ちゃん、イザヤが喜んでくれないから怒ってるのかな。


黙ってお腹の中の子の気配を感じていると、イザヤが不思議そうに聞いた。


「もしかして、……動いているのか?」

「うん。動いてる。生きてる。……触ってみる?」



私の誘いをさんざんためらってから、イザヤは恐る恐る私のお腹に触れた。

またタイミングよく、ポコポコと続けて赤ちゃんが動いた音が響いて伝わった。


「……これが……私の子供なのか。……はは……。生きている。生きているんだな。……そうか……。」


そう言ってイザヤは左手で目許を覆って仰向いた。

指の隙間から滲んだ涙が、白い頬を伝って流れた。



……喜んでくれてるんだよね?


しばらくイザヤの背中を撫でてから、聞いてみた。

「これで安心して死ねる?それとも、この子のために死ぬのやめる?」



すんと鼻をすすって、イザヤは私を再び抱きしめた。

「無理だ。……本当に、もはや、とても生きてなどいられぬと思っている。……私は……騎士団長とは名ばかりで……実戦を知らなかった……。討伐に参加したことはあったが、あんな、無秩序な殺戮の現場は初めてで……。私がオースタ島でそなたと過ごしている間に……みんな、あんな目に遭っていたのかと思うと……怖かったろう……。私は……今さら……悔やんでいる……。」


「……うん。……うん。」


イザヤ同様、戦場を知らない私には、うなずくことしかできなかったけれど……オースタ島での幸せだった時間を否定されたようで、悲しかった。