「言ったかもしれないな」
「月見バーガーだってさ。真夏日に食べるものじゃないよね」
「知るか」

 ちなみに夏休みは一月半ものあいだ居座りやがった。

「ねえ、タクジ」

 出逢った頃、ナツキは三つだった。親父が俺を呼んでいるのを真似したのだろう。
 以来、ナツキは生意気にも俺を呼び捨てにする。

「このベッドで女の子と眠ったことある?」

 突拍子もない疑問に、飲みかけのコーヒーをふきかけた。

「あるんだ?」
「……ないといえば嘘になる」
「ズルい。わたしとは寝ないのに」