千花の母親から電話がかかってきた。

「はい…?」

「千花が…倒れたの…柊くんも、病院に来て欲しいの。」

受話器なんて置く時間もない。

ぶら下がった状態の受話器から、電話の切れた音がする。

お金なんて持っていく余裕なんてないから、
バスも、タクシーも使わず、1キロ先の病院まで走った。

ナースステーションに行って、千花の病室を聞いて、すぐ向かおうとした。

けど、看護師さんは、俺を最悪な場所へ連れていった。

集中治療室。

そこにお母さんとお父さんの姿もいた。

「柊くん…。」

すごく深刻そうな顔をして、俺を迎え入れられた。
「お母さま、お父さま。娘さんの状態を報告したいので、来てもらってもよろしいですか?」

「俺も行かせてください…!」

「わかりました。」

「娘さんは、特病です。何十億人に1人とされる奇病、花咲病の持ち主です。」

一体この人は何を言ってるんだか、って感じだった。

特病。一生治ることの無い病気。

「娘さんは、もって2ヶ月かと。」

「冗談じゃない!千花は、すっげぇ元気なんだよ!そんなやつが、死ぬわけ!」

信じたくなかった。

なんだよ花咲病って。

2ヶ月。それは、桜の綺麗な新学期の頃。

俺は、高三だよ…。

「高校生活最後に、お前がいないのは、嫌だよ…!」