エリート御曹司と愛され束縛同居

ビル内に足を踏み入れると、周囲の目が一斉に注がれる。

高い天井に大きなガラスウォール、広々とした荘厳な空間に圧倒されてしまう。

是川さんが一緒とはいえ、いきなり副社長と共に出勤している私を訝しむ気配が手に取るようにわかる。

副社長との関係を邪推されてもおかしくない。


……だから言ったのに。


気をもんでいる私とは裏腹に涼しい顔で前を見つめている副社長。

ぴかぴかに磨かれた床にカツンカツンと歩く音が響き、すれ違う女性社員は皆、頬を染め恍惚の表情で見つめている。

颯爽と歩くこの人は本当に魅力的だ。

外見は言うまでもなく、自信に満ちた態度もすべてが人を惹きつける。

同居して恋人役までしているなんてにわかには信じられない。近くにいるけれど実際には手の届かない人、そんな考えが小さな棘のように胸にチクリと刺さる。


秘書課はこの二十五階建てビルの二十二階にあり、役員室と同じフロアになっている。

高層フロア専用のエレベーターを使用し、彼は真っ直ぐに副社長室に向かい、私は是川さんとに秘書課に向かう。

秘書課には現在私を含め六名が在籍していて、朝礼で皆に紹介され、挨拶のため口を開く。

「岩瀬澪です。秘書業務は未経験ですが、一日でも早く仕事を覚えたいと思っておりますのでどうぞよろしくお願いいたします」

頭を下げると、温かい拍手で迎えてくれる人々にホッと胸を撫でおろした。

秘書課は是川さんともうひとり、社長秘書で秘書課長である阪井(さかい)さん以外は全員女性だ。