エリート御曹司と愛され束縛同居

『完璧な秘書なら是川さんがいてくれるし、教えを請えばいいんだよ。それに俺が推薦した一番の理由はほかにある。なあ澪、先輩に会ってどう思った? 完璧な王子様みたいだったか?』

「まさか、威圧感丸出しで最悪の出会いだったわよ。誤解されていたせいもあるから仕方ないとは思うけど容姿以外は王子様要素なんて皆無よ。無愛想でつかみどころはないし、人の話を聞かないうえに強引だし」

『ハハッ、相変わらず正直だな。褒めるところは外見以外ないのか?』

「……優しくて思いやり深い、あとは心配性」

最後は褒めるところではないかもしれない。口調が尻すぼみになってしまう。

どんなに小さなことも質問したら丁寧に答えてくれるし、思い返すと、突拍子のない同居を受け入れて、さらには発熱した私を心配して夜通し看病までしてくれた人だ。

『そっか……先輩は取り繕うのも人あしらいも、空気を読むのも上手い。誰かに本心を見せて、気を許している姿なんてほとんど見た記憶はない。あの人が完璧なのは努力を怠らないからだ』

独り言のように呟く声はどこか寂しそうだった。

『あの人はずっと俺の憧れで目標なんだ。仕事面でもたくさん学ばせてもらったし、今後の生き方に悩んでいた時、誰よりも親身になってくれた人だ』

真摯な声が聞こえた。

私の知らない圭太の世界、葛藤……それを支えてくれた人なんだろう。意外な一面を知ったが妙に納得できた。