玄関を入ってすぐの二部屋は遥さんの部屋らしく、荷物を置いていたり、時折宿泊する日もあるという。

遥さんはオーナーなのでこの部屋の鍵を持っているし、当然ながら入室を許容しなくてはいけない。その際には事前に連絡をくれるそうだ。

基本的に友人といった他人の入室は禁止だが、許可された場合は可能らしい。以前に私たちが入室できたのも圭太が事前に申告したかららしい。

圭太は掃除が苦手なため、遥さんの指示でハウスキーパーさんをお願いしていたという。

そういった細かい特殊な取り決めがあるためか、家賃は無料になっているらしい。

「つまり独り暮らしだけど完全な独り暮らしではない、ってこと?」

「ああ。でも澪の私物に勝手に触れたりはしないし、私生活について口出しもしない。もちろんお互いの自室には無断で立ち入らない。家具家電を増やしたり、遥さんのものを処分する時は許可がいるけど」


要するに他人の出入りを許容できるかどうかの問題よね? 圭太の信用する憧れの女性なわけだし……あまり気にならない。


それよりも光熱費と管理費だけでいいという魅力的すぎる条件に惹かれる。

しかもこんなに豪華な物件、この機会を逃したら二度と住めないだろう。

「了解。是非ここに住ませてもらいたいです」

頭を下げると圭太が嬉しそうに言う。

「よかった、じゃあ早速報告する。ああ、それとこの部屋の持ち主については他言無用にしてほしいんだ」

ふいに神妙な顔つきで言われた。


どうしたんだろう、なにかあるのだろうか?