「圭太は遥さんと仲が良いの?」

ふたりの関係をどう表現してよいのか悩みながら、おずおずと尋ねる。

「それなり、かな。今は直接的ではないけど一応上司だから」


そっか、上司……あれ? 


「……まさか、遥さんって九重グループの人?」

「当たり前だろ。今頃気づいたのか?」

無言で頷くと呆れた表情を見せる。九重家の人ならこの豪華なマンションを購入していても不思議ではない。

「そもそもこのマンション、九重グループが開発、分譲したものだぞ」


……知らなかった。まったくどれだけ巨大なのよ。


自身の知識のなさに落ち込むが、それも仕方ないと思う。

一般市民の私には日本でトップのホテルグループの方々とお近づきになる機会なんてないのだから。

そもそも九重グループ関係者の氏名なんて会長や社長を務めている方しか知らない。それすら過去に圭太に教えてもらったくらいなのだから。

「まあ、とにかく。ちょっと散らかっているけど部屋を見ろよ。基本的な家具家電は全部遥さんのものだからそのまま使用可能だし、設備の説明もするから」

そう言われて、恐る恐る玄関に足を踏み入れる。

玄関は真っ白でマンションとは思えぬほど広い。案内されるがままに見学していく。

玄関わきの壁には等身大の鏡があり、シューズインクローゼットもある。玄関を入ってすぐに二部屋があり、長い廊下の途中にも二部屋ある。

廊下の突き当りがリビングとダイニングになっていて、大きな窓からは見事な眺望がのぞめる。

今日が雨なのは残念だけど、照明がなくとも採光が素晴らしいせいか、かなり部屋は明るい。

さらに奥には浴室と納戸のような部屋まであり、とにかく豪華で広い部屋だった。