「迎えに来てくれてありがとう。これ、お土産」

そう言って、圭太が幼い頃から好きな洋菓子店のプリンが入った紙袋を手渡す。圭太は甘いものが好きなのだ。

「ここのプリン、久しぶり。ありがとう」

嬉しそうに口元を綻ばせる姿は昔と変わらない。

百八十センチメートルは超えているであろう圭太と並んで歩く。

さり気なく車道側を歩いてくれる心遣いも変わらず、温かな気持ちになる。

道すがら周囲の施設、営業時間など自身がここに暮らして得た知識を教えてくれた。

やはり周囲はお店も多く、駅の雰囲気も明るく、人通りも多い理想的な環境だった。夜も街灯が多いので明るいそうだ。


「……やっぱりすごいね……」

マンションのエントランスに着いて思わず感嘆の声が出た。以前の微かな記憶通り、驚くほど豪華な物件だった。

エントランスの前に敷かれた石畳、そこを囲むように植えられた植栽は青々とした葉を茂らせ、色鮮やかな花を咲かせている。

マンションの外観は落ち着いた赤茶色のタイルで、エントランスは一面ガラス張りになっている。

鍵穴やセンサーに触れもせずオートロックが解除され、足を踏み入れた広い空間には革張りのソファや大ぶりの花瓶が置かれている。

高い天井と壁には木の装飾があり、とても上品だ。