でもちょっと待って、圭太の住んでいる場所って都内の一等地だよね? 


過去に一度だけ亜由美と遊びに行った時の記憶が蘇る。

今の職場から乗り換えなしの山手線で一本、しかも駅から徒歩五分もかからない。

マンションの隣に建設された商業施設内にはスーパーマーケットもあったはずだ。

そんな便利かつ立派なマンションの家賃はいくらするのだろう。分譲だったとすれば幾らの物件だったんだろう……考えるだけで恐ろしい。

「あの、そこの家賃っていくらするの……? 言っておくけど私、そんなにお給料高くないし貯金だってないよ?」

幼馴染みは私の懐事情をもちろん知っているだろうけど、念のため口にする。

『ああ、それは大丈夫。俺、家賃支払ってないから。光熱費と生活費 だけでいいって言われてる』

「ええっ?」

そんな超高級物件に無料で住めるなんて、これはもう運命の神様が味方をしてくれているとしか思えない。

『とりあえず先輩に話してみる。その後連絡するから待ってろ』 

穏やかに話す圭太の声に、心を弾ませながら電話越しに何度も頷いた。

明るい希望が持てて、ご機嫌な気持ちで眠りにつく。その日の夢は超高級マンションに悠々自適に暮らすというなんとも素敵なものだった。