圭太の実家と私の実家の距離は徒歩五分もかからず、生まれた時からずっと一緒だ。

ホテル業界で知らない人はいない佐久間グループのひとり息子として生まれた幼馴染みはいわゆる御曹司で、実家の事業を将来担う予定だ。そのため幼い頃から学業や習い事に忙しかった。

ご両親はとても温和な人柄で私たち兄妹をよくお屋敷のような家に招いてくれて、圭太の勉強が休みの時は共に遊び、本物の兄弟のように仲良く共に育った。

圭太のお父さんと九重グループの社長は古くからの友人同士でその縁もあり、修行の意味も込めて自社ではなく、九重グループへの就職をお父さんから勧められたそうだ。

一般人の私には幼馴染みを含めた、御曹司の話なんて雲の上の世界過ぎて見当もつかず、九重グループの社長や御曹司に拝謁する機会もない。

圭太とも幼馴染みでなければ会話すらできなかっただろうと大人になった今、つくづく思う。

社会人になった今も付き合いは健在で、時折食事の約束をした時などにはわざわざ会社まで迎えに来てくれる。

そのせいか佳奈ちゃんに、花嫁候補じゃないかと疑われているが、私たちの間に色恋沙汰はまったくない。

男性として意識したことはなく、恐らく圭太も同じ意見だろう。

幼い頃から一緒にいすぎているせいか、そういう対象にはお互いに考えらえれない。