エリート御曹司と愛され束縛同居

「なんだ?」

「あの、お話があるんですが少しお時間をいただけませんか?」

閉められた焦げ茶色のドアの前で告げると、家主が姿を見せた。

既に着替えて入浴を済ませたのか、髪が濡れて額にかかっている。

先程のかっちりとしたスーツ姿とは違い、シンプルな黒いTシャツにストレートのブルージーンズというラフな装いに一瞬見惚れてしまう。

近い距離からふわりと漂った柑橘系の香りはシャンプーかなにかだろうか。この家で香ることのない爽やかな香りにほんの少し鼓動が跳ねた。

幼馴染みや兄のものとも違う男性の香り。

堅苦しさが消えてもその滲み出る威圧感や色香は変わらない。

端正な面差しからは相変わらず感情が読めない。


「リビングで聞く」

それだけ言って後ろ手に部屋のドアを閉めた。

小さく頷いて後ろに続く。

L字型のソファにひとり分の隙間を開けて右隣に座る。

立って話そうとしたのだが、座るように促され、少しだけ副社長の座っている方向に身体を傾けて腰を下ろす。

「あの、図々しいのは承知で申し上げるのですが、実家の改築工事が終わるまでここに住まわせていただけませんか?」

緊張しながらも率直に伝える。

膝に置いた自身の手が震えそうになるのを必死に隠す。