エリート御曹司と愛され束縛同居

『……なるほどねえ、まあ、それは仕方ないと言うか不運というか……』

事のあらましを聞いた親友はなんとも言い難い、と言った口調で返事をする。

「突然出て行けなんて言われても困るよ。実家はまだ工事中だし、両親が今暮らしている仮住まいのマンションは通勤には不便だし。そもそもそのせいもあって独り暮らしを選択したのに」

『部屋を今から探すにしてもすぐには見つからないし、お金がかかるもんね』

私の懐事情に詳しい親友の指摘が胸に重くのしかかる。

『でも引っ越し費用はだしてくれるんでしょ?』

「そう言っていたけど、さすがにもらえない。ただでさえ家賃は無料で家具家電も使わせてもらっている状況だし」

今さらだけれど、私はかなりの好待遇でこの部屋に住まわせてもらっているのだ。

ひとりの社会人女性として、これ以上甘えるわけにはいかない。しかも相手は親会社の副社長だ。

『でもそうすると独り暮らし用の家電を買いそろえなくちゃいけないわよね? 家具もご両親のところから運ばなくちゃいけないし、費用がさらにかさむんじゃない?』

現実的な指摘にさらに気持ちが沈む。正論過ぎて泣きたくなる。

『私と同居する?』

職場近くのマンションで独り暮らしをしている、優しい親友の申し出をやんわり拒否する。

化粧品会社の美容部員として現在渋谷の百貨店に勤務している亜由美は近々恵比寿の百貨店に異動の可能性があるらしい。

その機会に引っ越しをして、大学の頃から交際をしている隼人(はやと)くんと同棲、もしくは結婚を考えていると以前話していた。