エリート御曹司と愛され束縛同居

「あ、あの、初めまして。岩瀬澪です……先程は大変失礼いたしました」

今さらだけど、名乗って頭を下げた。

この部屋の持ち主に挨拶をする必要があるし、なにより先程の非礼を詫びなくてはならない。

「……九重遥だ」

不機嫌そうに腕を組んだまま言われた。

「帰国、されていたんですか? この部屋に帰ってこられる時は事前に連絡をくださると圭太には聞いていたのですが……」

おずおずそう言うと、氷のように冷たい目を向けられた。

「今日、連絡をしたが」

「えっ、でもスマートフォンには着信が……」

そう言った途端、スマートフォンは自室のバッグの中だという事実を思い出す。

先程はうろたえていて思い出せなかった置き場所も今なら簡単にわかる。

そういえば帰宅してから一度もスマートフォンを手に取っていない。自分の失態に思わず額に手を置いて男性から目を逸らす。


でも、見知った番号からは着信がなかったはず……。


「この番号から着信がなかったか?」

ご丁寧に自身のスマートフォンに番号を表示してくれる。

屈んでその番号を見つめるとどこか見覚えのある数字の列。

「……もしかして何回かかけてくださいました?」

恐る恐る尋ねると無言で頷かれた。

思い当たる件はひとつ、佳奈ちゃんとの帰り道にかけなおした見知らぬ番号だ。

「……電話番号違いませんか?」