エリート御曹司と愛され束縛同居

「これでもまだ信用できないなら圭太(けいた)に確認するか?」

スマートフォンを骨ばった長い指で持ち、腕組みをしながら問われる。

九重株式会社に勤務する幼馴染み、佐久間圭太の名前が出てきて驚く。

彼はこの部屋を借りる仲介をしてくれた人物でもある。

確かになりすまし、という場合もある。

けれどこの人は玄関から堂々と部屋に入ってきた。僅かとはいえ施錠した記憶があるから、この部屋の鍵を持っているのだろう。

それにひと言も話していないのに圭太の存在を知っている。

契約書に圭太についての記載はないので、知り合いでなければ、この状況で幼馴染みの名前は出てこないはずだ。

その事実を鑑みると、この人は正真正銘の九重遥さんだ。

大きな目を見つめ返し、否定の意味を込めて首を横に振って丁重にパスポートを返却する。幼馴染みに確認する必要はない。

「もしかして、私たちお互いに誤解をしていた……?」

独り言のように呟くと、彼はクシャリと前髪をかき上げた。その仕草に漂う色香にこんな状況だというのに見惚れそうになる。

「そのようだな。俺もわざわざ性別確認をしなかったし、圭太が信用している幼馴染みだと聞かされていたから疑わなかった」

私も似たようなものだ。

実家の改築工事が迫っていたし、なにより圭太の信用する先輩だと聞かされていた。

その上、会社の上司とまで言われて信じないわけがない。