エリート御曹司と愛され束縛同居

「ええと、あの、すみません。私が正当な借主ってわかってもらえました?」

男性は言葉を発さずに胡乱な目を向けてくる。

返事をもらえないけれど、構ってはいられない。

「でしたらすみませんがお引き取り……」

ください、と言おうとした途端、男性がドサッとソファに腰をおろした。


「あの……?」

「俺が九重遥だ」


私の声にかぶさるように抑揚のない声で言い放つ。


九重遥?


その名前は知っている。この家の持ち主で契約相手だ。そしてあの九重グループの人間だ。


え、でも、遥さんって女の人だよね? 


目の前のこの人はどう見ても男性だ。理解できない現実に混乱する。

「遥さん、って女の人じゃ……?」

無意識に呟くと律儀に返される。

「俺は男だ。現在九重グループに遥という名は俺しかいない」

鋭く言い切られて、返す言葉を失う。


遥さんが男性……嘘でしょ? じゃあ、この人が家主なの? 本当に? 


思わず息を呑む。衝撃で声が出ない。

それはソファに腰かけた彼も同じようで、さっきの発言から私を男性だと勘違いしていたように見える。

「これが証拠だ」

そう言ってスーツの上着からパスポートとスマートフォンを取り出す。

渡されたパスポートのページには眼前の男性とうりふたつの写真と『九重遥』という名前の記載があった。