……かいつまんで聞いただけでも兄の性格を考えると困難さは想像できる。

それでなくてもあの兄は酷い言い方をしたのではないだろうか。

父と連れ立ってリビングに向かう遥さんを思わず見やるとふわりと相好を崩された。

その目には私を安心させるような色が滲んでいて、しっかりしなくてはという想いが湧き上がる。


ここは私の実家だ。

私自身がきちんと家族に彼への想いを伝えて説明しなければいけない。

自分自身がどうしたいのか、なにを望み、誰と生きたいのか、しっかり自分の言葉で気持ちを語らなければいけない。

ギュッと拳を握りしめる。


「澪、こちらに来なさい」

いつもと変わらない穏やかな父の声に促されて、和室に向かう。

座卓の前には既に父と兄が座っていて、母も父の隣に腰を下ろす。

私は両親の真向かいに座している遥さんの隣に腰を下ろした。

「ご挨拶が遅くなり大変申し訳ございません。九重遥と申します。本日はお時間をいただきありがとうございます」

はっきりとした声で遥さんが口火を切った。

「いや、何度も丁寧な電話をくださってありがとうございます。幾つになってもやはり娘が心配でね、息子も同様で色々あなたに失礼な物言いをしてしまったようで大変申し訳ない」

父はゆったりとした口調で謝罪の意を表した。