マンションのエントランスで両親にオートロックを解除してもらう。

実家なのでもちろん鍵を持っているが、あくまでも今日は来訪者として扱ってもらいたい、と遥さんに言われたからだ。

私のために尽力してくれる姿に胸が熱くなった。

玄関の呼出音を鳴らすとすぐに母がドアを開け、その隣には父の姿があった。


「本日はお忙しいところお時間をとってくださりありがとうございます」

開口一番そう言って、玄関先で遥さんは両親に頭を下げた。

「いえいえ、わざわざ来てくださって……九重さん、頭を上げてください」

至近距離から見る美麗な面立ちと雰囲気に圧倒されたのか、母は少し頬を赤らめながら遥さんを室内へ案内する。

「まったく澪ったら……こんな大切な話をずっと黙っているなんて」

遥さんの後ろに続いて部屋に上がろうとすると、母に腕を引かれてお小言をもらった。

どうやら遥さんはアメリカで圭太から報告を受けてすぐに両親に連絡を取ってくれていたらしく、ふたりは今回の同棲に至った経緯や諸々の出来事の説明を受けていたという。

そのうえで遥さんは帰国次第改めて挨拶に伺いたいと幾度も懇願したらしい。


最初、両親から話を聞いた兄はけんもほろろに断り、厳しく叱責したという。

それでも遥さんは諦めずに兄と両親に謝罪を告げ、今回の経緯を丁寧に幾度も説明してやっと今日を迎えたのだと母から簡潔に説明を受けた。