「……これから先、泣くのは俺の前だけにしろよ」

少しだけ拗ねたような甘い口調に幸せな涙がひとつ新たに目尻から零れ落ちた。

「……遥さんの前でしか泣いてない」


どうしてだろう。


圭太の前ではこらえられたのにこの人の前では涙腺が緩んでしまう。

涙を形の良い唇が拭った後、私の唇にそっと重なる。

温かくて柔らかい誓いのキスに心臓が幸せなリズムを刻みだす。


「……せめて出会いのきっかけになった部屋でプロポーズしたかったんだ」


頬に、額に羽のようなキスを落としながら呟く。


「あの日、ここで澪と対面した瞬間、俺の人生が変わったんだ」


甘い台詞に涙が止まらない。

困ったような表情を浮かべながらも目はとても優しい光を帯びている。


「これからはずっと一緒だ」


力強く言われて、胸がいっぱいになりただ頷くしかできなかった。