『誰かに狙われたり危害を加えられたらどうする?』


真顔でそう言って送迎をつけようとするので全力で拒否をした。

遥さんならともかく、ただの一般市民の私を襲う人はいない。

是川さんにも説得してもらい、なんとか納得してもらったがしばらくは不機嫌さを隠そうとしなかった。

心配性なのか過保護なのか本当によくわからない。


会社では上司だし、帰宅しても癖のようなものでなかなか言葉遣いが戻らないのが気に入らないらしく、ふたりきりの時に敬語で話すと甘いお仕置きをされてしまう。

その近すぎる距離にまだ慣れず、戸惑ってしまうのは私だけなのだろうか。


今日の副社長は朝から取引先に直行予定で、普段より出勤時間は早めだ。

そのため私は一時間ほど、家を出るまでまだ余裕がある。昨夜、わざわざ起きなくてよいとは言われたけれど見送りをしたかったので彼と同じ時間に起床した。


最近是川さんは気を遣ってくださっているのか、玄関の中に足を踏み入れずにエントランス付近で副社長を迎えてくれている。

こんな醜態を上司に見せるわけにはいかないのでそれは申し訳なくも助かっている。


寝室は今も別々だ。

接待なども多い彼とは帰宅時間や就寝時間が違う場合が多く、心を通わせてから数回一緒に眠ったけれど、ずっと抱き込まれてただひたすら緊張してしまい、うまく寝つけなかった。

一緒の寝室にしようと再三言われているけれど、まだ状況の変化についていけず返事を返せていない。